チェルノブイリから学ぶ

福島原発事故がレベル7に認定された今、最も役立てなければならないのが、チェルノブイリの経験です。有用と思われる情報をリンクしておきます。

原子力安全研究グループ
京都大学原子炉実験所による、膨大な研究報告。以下はほんの一部です。
  チェルノブイリ原発事故の概要 今中哲二
  チェルノブイリ原発事故の「死者の数」と想像力 今中哲二
  チェルノブイリ原発事故の実相解明への多角的アプローチ

スウェーデンの今
スウェーデン在住の研究者、佐藤 吉宗氏が、チェルノブイリ事故と、その後の対応について、詳しく書いて下さっています。以下、代表的な記事を挙げておきます。
  チェルノブイリ原発事故のあとのスウェーデン
  食品の放射性セシウムを減らすためのアドバイス
  汚染対策
  汚染対策(その2)

汚された大地で ~チェルノブイリ 20年後の真実(動画)

チェルノブイリ・百万人の犠牲者(動画)
IAEA(国際原子力機関)とWHO(世界保健機構)は、チェルノブイリの犠牲者を4000人としています。しかし、この中で紹介された本では、98万5000人であると見積もっています。なぜこれ程の違いが生じるのでしょうか? 実は、IAEAとWHOは協定を結んでおり、他方の承認なしに調査書の発表ができないことになっているそうです。原子力の推進をする団体の発表をそのまま信じられるでしょうか?

健康被害は出るのだろうか

福島原発事故で、東京にも多量の放射性物質が降ったことは分かりましたが、これは人間の健康にどれぐらいの影響を及ぼす量なのでしょうか? いくつかの文献を当たって、調べてみました。

1、日本の死産率より

真っ先に健康被害が出るのが、放射線に敏感な胎児や乳幼児だと言われています。これについては、日本の死産率の統計を出して、警告を出している人がいます。しかし、解釈を巡っては賛否両論あり、今のところ断定できるほど明確な主張ではありません。以下のサイトに詳しくまとめられていますので、ご覧ください。

意外な展開:自然死産率の生データを見てみた

2、アメリカの乳児死亡率より

もう少し判断材料を増やすため、外国のデータも見てみましょう。アメリカは国内にも核実験場がありますので、日本より影響は大きかったと思われます。Wikipediaに出ていた、乳児死亡率(1000人あたり)は以下のようになっていました。

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  (Infant:1才以下 Neonatal:28日以下 Postneonatal:28日~11ヶ月)

確かに、60年代前後に、若干の山があるようにも見えます。しかし、放射線の影響がなかった場合、どれぐらいの死亡率になったのかは分かりませんし、放射線以外の原因も考えられます。多目に見積った場合だと、1000人あたり10人ぐらいは増加しているとも見えますが、古い統計データですので、断定する根拠としては弱そうです。

3、チェルノブイリ事故後の北欧の新生児死亡率

では、1986年のチェルノブイリ原発事故から学んでみることにしましょう。最初にチェルノブイリからの放射性物質が報告されたのは、1000キロも離れたスウェーデンでした。その後、欧州全域がチェルノブイリからの放射能で汚染を受けました。欧州の汚染マップを見ると、北欧の土壌汚染は、東京や茨城に降った放射性物質の量と、だいたい同じぐらいのレベルだと見ることができます。では、北欧各国の新生児死亡率はどうなっているでしょうか?

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1986年は増えているよりもむしろ減っており、その後も低下傾向にあります。これを見る限りは、チェルノブイリの影響はなさそうです。

4、スウェーデンの相対ガン発生率

京都大学原子炉実験所の今中哲司氏が「チェルノブイリ原発事故の「死者の数」と想像力」の中で紹介しているマーチン・トンデル氏の文献では、土壌の汚染とガン発生率に相関があると主張しています。
東京の土壌汚染が5kBq/m^2程度とし、比例するならば相対ガン発生率は1%ぐらいの上昇になると見込まれます。半分はガンになると言われる現代、1000万人都市であれば、5万人が福島原発の影響でガンになるかもしれません。この調査は、1988年から1996年までのデータなので、その後さらに増えている可能性もあります。

5、チェルノブイリ原発事故によるその後の事故影響

上と同じく、京都大学原子炉実験所の今中哲司氏が執筆されているチェルノブイリ原発事故によるその後の事故影響(1997年発行)です。これを見ると、仮にチェルノブイリの1/10の規模であったとしても、相当な健康被害が出ることになります。汚染レベルの比較が知りたいところです。

いろいろ調べてみましたが、残念ながら断定的なことは言えないという印象です。今後、数年から数十年、日本での調査を続ければ、はっきりした結果が出てくるでしょう。今のレベルが危険なのかどうかは、自分自身で判断するしかありません。

関東に降った放射性降下物量

まずは、東京都や茨城県が、どれぐらいの量の放射性物質に汚染されたのか把握しておきたいと思います。

もうだいぶ古い話題になってしまいましたが、一部のメディアで、「大気中核実験が盛んに行われた60年代は、最近の値と比較して1万倍ぐらいの放射能にさらされていた」という記事が出回っていました。事故後に東京で観測されている放射線量は、自然放射線量に比べて、それほど多くないので大丈夫だと説明したものが多いようです。

疑問に思って原典を調べてみると、この1万倍だった放射能は、「降下物に含まれる放射性物質の量」であり、決して、「空間放射線量」や、「土壌の放射能」ではありません。混同して書いている記事が多いようなので、間違わないようにして下さい。

さて、確かに、過去の大気中核実験や、チェルノブイリ事故により、日本にも放射性物質が降り注ぎました。それはどれぐらいの量で、今回の福島原発事故と比べて、どれぐらいのレベルだったのでしょうか? 文部科学省が公表しているデータから計算して、セシウム137の降下量をグラフにまとめてみました。

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2008年までのデータは、環境放射線データベース から、20011/3/20-24の4日間データは、文部科学省の定時降下物のモニタリングから取得しました。あちこちのモニタリングデータを見ると、関東地方に関しては、大部分の放射性物質はこの4日間に降下していますので、これで全量に近いと言えます。

最も降下量が多かった60年代初頭と比べても、今回の事故は1桁ぐらい大きな数値が出ていますから、極めて甚大な汚染であることが分かります。比較すると、チェルノブイリの事故の影響は、日本ではそれ程大きくなかったんですね。

もう少し、数値の比較をしてみましょう。

 1957年-1985年の合計  5,375ベクレル/m^2
 1986年(チェルノブイリ事故の年)  135ベクレル/m^2
 1986年-2008年の合計  6ベクレル/m^2
 2011/3/20-24 新宿  6,360ベクレル/m^2
 2011/3/20-24 ひたちなか市  25,483ベクレル/m^2

新宿の場合、過去50年の放射性物質降下量よりも多い量が、わずか数日の間に降っているのです。ひたちなか市に至っては、東京の約4倍にもなります。今、関東圏に住んでいる人は、日本人がまだ経験したことのない程の量の放射性物質に囲まれて生活しているのです。

福島原発事故

東日本大震災から、約50日が経ちました。

福島第一原発は、今もなお大量の放射能が放出され、極めて危険な状態が続いていますが、さらなる甚大な危機に陥るリスクは、徐々に減っているようです。

今の状況ならば、多少の不安を抱えながらも、つくばに暮らすことは許容できると考えています。しかし、家庭の事情もあり、今後しばらくは愛知県の実家に身を寄せつつ、時々つくばに帰る生活になりそうです。

いま最大の関心は、既に放射能に汚染されてしまった関東で住むことが、どれぐらいのリスクがあるのかという点です。いくら政府や研究者が安全だと言っても、健康被害へのリスクが完全にゼロではないはずです。そのリスクが許容できて、その土地に住む必要や魅力が勝るならば、住み続けるという選択になることでしょう。

私は、その土地の空気を思い切り吸い、その土地の水をがぶがぶ飲み、その土地でとれた食物を腹いっぱい食べることができなければ、その土地で住むことはできないと思っています。今後、つくばに戻って、安心して生活ができるのかどうか、なるべく中立的な立場で考えてみることにします。