コラム

電気の自給に向けて 充電式刈払機の導入

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今まで、畑の草の管理のために、エンジン式の刈払機を使ってきましたが、新たに、充電式の刈払機を導入してみました。既に、マキタの14.4Vのインパクトドライバーを持っていたので、その電池に合わせて、本体のみ購入。

さっそく使ってみたところ、思ったより実用性高いという印象です。パワーや電池の持続時間が心配でしたが、小さい草をこまめに刈るなら、これで十分。バッテリーも草刈りしているうちに、もう1個を急速充電すれば、ほぼ連続して使えます。さすが、プロ用の電動工具で有名なメーカーなので、使いやすいです。

エンジン式のように、ガソリンと混合オイルと混ぜたり、ギアオイルをさしたりする手間が要りませんし、電気ならランニングコストは極めて安いです。作業中も排ガスは出ませんし、音も静か、振動もほとんどありません。女性でも、使いやすいと思います。
上は、自己流に、ナイロンロープと、跳ね防止カバーを付けています。万が一体に当たっても、大けがはしませんし、支柱に当たっても問題ないので、安心です。

ついでに、家と車用に、充電式掃除機も買ってみました。これは、使ってみるとかなり便利。電源コードを気にすることなく、どこにでも、手軽に持って行けますので、少しずつ掃除するのに便利です。パワーでは、AC100Vにはかないませんし、ヘッドの作りは簡素ですが、十分実用的です。LEDライトが付いているのもいいですね。もう、普通の掃除機はほとんど使わなくなるかもしれません。

私のソーラーシェアリング発電所では、売電とは別に電灯契約をしていますので、現地でいつでも充電できます。電源のないところであっても、ソーラーパネルとバッテリーのシステムを設置すれば、充電には不自由しないでしょう。こうして、エネルギーの使用量を下げて、自然エネルギーの電気を使うというのは、エネルギー自給につながります。

参考までに、上記製品一覧です。
マキタ Li-ionシリーズ
・充電式インパクトドライバ TD137DRFX
・充電式刈払機 MUR142LDZ
・充電式クリーナー CL141FDRFW
刈払機メインで、バッテリーの重さも気にならなければ、18Vシリーズで揃えるのもいいかもしれません。

電気の自給に向けて 1kWhの請求書

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こちらは、6月に送られてきた、使用量1kWhの電気の検針票。普通の家庭では、まず見ることはないでしょう。これは、もちろん、私の家ではなく、発電所が設置してある土地での電灯契約の検針票です。現場での電動工具や井戸ポンプ程度しか使用していませんので、使用量はほんのわずかです。
とはいっても、583円請求されているのです。ということは、583円/kWh。一般家庭の平均的電気料金と比べると、20倍程度高い電力単価になります。これぐらいの電力の使用量であれば、ソーラーパネルとバッテリーを使った独立電源でも十分まかなえますし、その方がコストも安くなります。
電気の使用量を極限まで絞った上で、独立電源にするというのは、今後電力使用の選択肢として、広まってもいいように思います。

ソーラーシェアリング架台の強度

ソーラーシェアリングの見学会で、「台風で壊れないか心配」ということをおっしゃる方がいます。ちょうど、TechOnのサイトに、同じような内容の記事が出ていました。

「工学的安全」と「法的安全」、「経済的安全」に大きな差

 ソーラーシェアリングでは、「低コスト化を優先するあまり、安全性への配慮に疑念を抱く発電システムも多い」と書かれています。これは、大きな誤解を招く表現だと感じます。

現実に、10年ぶりの大型台風と言われた、2013年の台風26号が真上を通った時、現場で観察していましたが、わずかにカタカタ揺れる程度で、何の不安も感じない状況でした。

風荷重は、面積に比例しますので、通常の野立てのソーラーのように、250W程度の大きなパネルを何十枚もつなげて設置するのは、構造的に風に弱く、合理的ではありません。

長島式ソーラーシェアリングのように、小型パネルを水平に並べると、風が強く当たるのは、外周のパネルだけです。ほとんどの風は吹き抜けるので、風荷重を受けにくい構造になるのです。一般的な野立てより、細い構造、小さな基礎でも、十分に持ちこたえるはずです。

また、上部で連結されていますので、全体として揺れや風荷重に対して、非常に強い構造になります。高い位置に設置してあるので、風で飛んできたものが当たりにくいというメリットもあります。

さらに、私の設計のように、回転機構を付ければ、ほとんど横風は当たらなくなります。おそらく、民家の屋根が飛ぶぐらいの風が吹いても、持ちこたえるだろうと、自信を持っています。

最近、見聞するソーラーシェアリングの中には、普通の野立てのシステムの構造で、支柱を高くしただけの事例が見られます。これは、地震にも風にも極めて弱い構造ですので、採用しないことを強くお勧めします。

ソーラーシェアリングの遮光率

最近は、少しずつソーラーシェアリングを実際の農地に設置する話を聞くようになりました。しかし、通常の野立てのソーラー発電と同じ発想で、ぎっしりとパネルを敷き詰める設計しているものが目立ちます。

聞けば、フキ、ミョウガなど、太陽光をあまり必要とせず、手間もかからない野菜を栽培するとか。効率良く太陽光発電をするために、栽培の方には極力光を与えず、農作業も楽に済ませようという考えなのでしょう。それはもう、発電が主であり、農業は仕方がなくやっているという印象を受けます。発電が主であるなら、雑種地、原野、山林などの地目で実施して頂いた方が、ずっと楽に発電事業ができるでしょう。

畑というのは、連作を避けるため、毎年品目を変えるのが普通です。しかも、今後20年間は発電事業を行うわけですから、途中で耕作者が変わり、別の野菜を栽培する可能性もあります。私は、ソーラーシェアリングでは、どんな野菜でも栽培できる程度の遮光率にするべきだと思っています。具体的には、長島さんのおっしゃるように、パネル面積/設置面積が、およそ1/3以下になるように設計するのが適当だと考えています。遮光率と単収については、まだ、きちんとした知見がありませんので、最初はなるべく安全側でスタートした方が良いでしょう。

今年の4月に出た農水省の指針では、遮光率の制限はなく、「単収が20%以上減少しないこと」となっています。単収は、日照量以外にも、気温、降雨量、土壌、栽培品目、栽培方法によって大きく変わりますから、あまり意味のある数字とは思えません。厳密に適応しようとすると、非常に厳しい条件になってしまいます。

そこで、1/3以下の遮光率であれば、単収減の制限はかけず、何らかの栽培を継続していれば良いことにして頂きたいと思っています。そうすれば、家庭菜園や貸農園も気楽に実現できますし、畑はきちんと維持されるので、将来、食糧増産が必要になった場合にも安心です。遮光率1/3以上とした場合に、発電重視の設備であると見なして、全面転用するとか、単収報告するとか、いくつか厳しい条件を付ければいいのではないでしょうか? 指針の改善を望みます。

ソーラー発電と植物のエネルギー変換効率

ソーラーシェアリングは、太陽光を発電と植物で分かち合う方法ですが、エネルギーの視点で見ると、両者はどれぐらいの違いがあるでしょうか?

植物の光合成による、太陽の日照エネルギー固定率は、年間を通してみると1%以下だそうです(参考1参考2)。一方、一般的なシリコン単結晶のソーラーパネルの変換効率は、15%を超えます。ひと桁以上、太陽光発電の方が優れているのです。一定面積で太陽エネルギーを利用することを考えるなら、植物の光合成(バイオマス含む)は、極めて生産性の低い方法であることは、理解しておく必要があります。
(ただし、廃棄物処理場のような大量に燃料が集まる場所ではどんどん活用するべきですし、液体燃料や、燃焼を利用するような使い方は、電気には置き換えられませんので、バイオマスも有効利用するべきだと思っています。)
農地の一部を使った太陽光発電は、土地と太陽光を、非常に有効活用するエネルギー生産方法です。すべてバイオマスエネルギーで生活していた江戸時代と比べたら、ソーラーシェアリングを中心としたエネルギー文明は、ずっと豊かにエネルギーを使える社会になることでしょう。

農村共同体を活用したソーラーシェアリング普及

2013年4月1日に農水省からソーラーシェアリングを農地で認める方針が発表され、今後、一斉に全国の農地で普及が進んで行くと思われます。いままで、市場がほぼゼロだった、「農地での太陽光発電」が始まるということは、施工のための膨大な人材を新規に確保する必要があるということです。

しかし、今後FITの買い取り価格が低下すると同時に、業者が乱立するでしょうから、大量に人を雇える業者はそう多くはないと思われます。では、どのようにして施工を進めていくべきでしょうか?

農家の方は、土木建築や造園などを兼業でやっている人が多いですし、大型のビニールハウスなども自分で作ってしまうぐらい作業慣れした人はいくらでもいます。今後、そのような農家の人材を組織化して、地域の農家で協力し合いながらソーラーシェアリングを普及させていく仕組み作りが必要です。資本は外部であっても、農家自身に雇用が生まれれば、理解が得られやすく、農地を提供する農家も増えることでしょう。

農家の力を活用した、ソーラーシェアリングによる農村活性化が、早い段階で実現することを願っています。

ソーラーシェアリング農業

ソーラーシェアリングのシステムを作っていると、必ず人に聞かれることがあります。「下では何を栽培するのですか?」

つくば市で作製中のシステムは、パネル傾斜を最適に調整しても、夏の遮光率25%、冬の遮光率50%程度です。おそらく、ほとんどの作物は特に工夫しなくても、そのまま栽培することは可能だろうと思っています。それでは、何の面白みもないので、栽培にも付加価値を付けることを考えています。

「時期をずらす、場所をずらす」
ソーラーパネルで遮光することにより、春が少し遅くなるでしょう。菜の花や、エンドウ、フキノトウなど、一斉にできてしまう作物の出荷時期を変えることができます。農産物はどうしても同じタイミングで大量に収穫されてしまうので、日照の調整による出荷時期シフトは、大変有用です。
また、夏には、日差しを弱めることで、ショウガ、ミョウガなどの焼けを防止し、夏に味の落ちるネギや、葉物野菜なども、栽培しやすくなると思われます。
さらに、日照を調整することにより、高原で栽培が盛んなレタスなどが、平地でも栽培しやすくなるなど、栽培適地をずらす効果も見込めます。これにより、農産物の地産地消を促進し、輸送コスト低減にも貢献できます。

「立体的農地利用」
ソーラーシェアリング用の、高く頑丈な架台がありますので、様々な構造物を簡単に畑に取り付けることができます。防風ネット、虫よけネット、遮光ネット、雨除けなどの設置は、大変容易です。
立ったまま、あるいは車いすに乗ったままでも作業できるように、空中プランター栽培にも活用できます。さらにその下で、堆肥作りをすれば、3段利用も可。
架台が必要な、つる性のブドウ、キウイなどは、パネルより1段下に棚を設置すれば、共存可能です。
今後は、ソーラーシェアリング架台を活用した立体栽培方法のアイデアが無数に生まれ、農業のやり方が一変する可能性を秘めています。

農水省プレスリリース

本日、農水省から、農地での太陽光発電についての指針が発表されました。
「支柱の基礎部分が農地転用に該当する」となっていますが、比較的緩い条件で
一時転用許可が出るようです。
今年度は、ソーラーシェアリング普及の年になるかもしれません。

ソーラーシェアリングの普及

2012年は、ソーラーシェアリング元年でした。事例はまだ少ないですが、各地でいろいろな形で取り組みが実施されました。今後、ソーラーシェアリングはどのような形で普及して行くことになるでしょうか?

農地でのソーラーシェアリングが認められれば、大規模農家による取り組みが広がることは間違いないでしょう。ヘクタール単位の田畑を持つ農家が本格的に取り組めば、膨大な量の導入が進みます。多くは金融機関の融資で、それぞれが億単位の事業になると思われます。

また、市民ファンドや私募債で資金を集めて実施することも考えられます。最近では、多くの市民が自然エネルギーの普及を願い、投資したいという動きがあります。しかし、実際にお金を集めて、事業を実行に移すのは、相当な手間や時間がかかることは覚悟しないといけません。

3つめの形として、退職者が、資産運用と仕事を兼ねて取り組むケースがあると思います。50kW程度の発電所であれば、1500万円程度の資金で実施できるので、退職金等で工面できる人は多いでしょう。年金代わりに投資する価値は、十分あります。下での農業は、自給用や隣人知人に配る程度でもいいですし、市民農園にしても良いでしょう。資金があれば動きは速いですし、小さな工務店と組んだ地域的な事業として、急速に広がるのではないかと思っています。